働き方の仕組み2026-08-04監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

北海道の中継輸送とドライバー交代制 — 長距離の働き方はどう変わるか

この記事の要点

「今週、初めて三日連続で家に帰れたんです」——先日、道東エリアで長距離便に乗っているドライバーさんと立ち話をしていて、そう聞かされて僕は少し驚きました。

結論から言うと、北海道の物流業界でも中継輸送とドライバー交代制の導入が徐々に進んでいて、これまで数日単位で家を空けるのが当たり前だった長距離運行の一部が、日帰りや一泊二日に変わってきています。ただし全ての会社・全ての区間が対象になっているわけではなく、対象になる区間とならない区間の差はまだ大きいというのが僕の体感です。今日はこの中継輸送という仕組みを、実務の手順から整理していきます。

0. 中継輸送は「泊まりを減らす」仕組みだが、全員向けではない

中継輸送というのは、長距離の運行区間を途中の拠点で分割し、その拠点でドライバーを交代する、あるいは車両やトレーラーだけを交代することで、一人のドライバーが担当する距離を短くする仕組みです。これによって、片道800kmを一人で通し運行していたようなケースが、片道400kmずつを二人で担当する形に変わり、それぞれが自宅に戻れる可能性が高まります。ただし僕が現場で見てきた限り、中継輸送に切り替わっているのは幹線と呼ばれる特定の主要区間が中心で、地方の枝線や少量多頻度の配送ルートまで広がっているわけではありません。求人票に「中継輸送あり」と書いてあっても、自分が担当する区間が本当に対象なのかは面接で具体的に確認する必要があると僕は考えています。

1. 中継輸送とは何か — 定義と呼び方の整理

従来型の長距離運行は、出発地から目的地まで一人のドライバーが通しで走る、いわゆるノンストップ運行が基本でした。これに対して中継輸送は、途中の中継拠点でバトンタッチをする運行方式です。呼び方は会社によって「リレー輸送」「交代運行」などとも呼ばれますが、仕組みは大きく二つに分かれます。一つは積み替え型で、中継拠点でトレーラーや荷物ごと車両を乗り換え、ドライバーはそれぞれ元の拠点に戻ります。もう一つは交代型で、同じ車両・同じ荷物のままドライバーだけが乗り換わり、車両自体は最終目的地まで走り続けます。積み替え型は荷物の積み下ろしの手間が発生する分、荷崩れや破損リスクの管理が必要になり、交代型は車両の運行効率は良い一方で、乗り換えるドライバー同士の引き継ぎの精度が問われます。

2. 北海道で中継輸送が広がる背景 — 距離の長さと改善基準告示

北海道は道内だけでも札幌から釧路まで約340km、稚内までは約330kmと、一つの運行で長距離になりやすい地理条件があります。さらに本州向けの輸送はフェリーを挟んだ上で本州側の長距離運行が続くため、一人のドライバーの拘束時間が伸びやすい構造です。ここに関わってくるのが、2024年4月に施行された改善基準告示(厚生労働省)の改正です。この改正では、勤務終了後の休息時間が継続8時間以上から継続9時間以上に伸び、1日の拘束時間は原則13時間、15時間超は週2回までという制約が明確になりました。連続運転時間は4時間ごとに30分以上の中断が必要という基準は変わっていません。実際、道東方面の路線に乗っていたドライバーからは、改正前は片道14時間近い運行もあったが、改正後は9時間の休息を確保するために運行計画自体を見直す必要があった、という話を僕は聞いています。一人のドライバーが長距離を通しで走ると、この休息時間や拘束時間の枠に収まりにくくなるため、中継拠点での交代という選択肢が現実的になってきた、というのが背景です。国土交通省も以前から中継輸送を含む輸送の生産性向上の実証事業を進めてきており、業界としては制度と実務の両面から後押しされてきた流れだと僕は理解しています。

3. 中継拠点での一日の流れ — 積み替え型と交代型

実際の一日の流れをイメージしてもらうために、交代型のケースを例に挙げます。朝、出発地の営業所を出て、片道の中間にある中継拠点、多くは旭川や帯広など道内の主要都市が使われますが、そこまで走ります。到着後、対向から来た別のドライバーの車両とすれ違う形で乗り換え、書類の受け渡しと車両の簡単な点検を行い、そのまま元の営業所方向へ戻ります。うまく噛み合えば、昼過ぎには中継拠点を折り返し、夕方には自宅のある営業所に帰着できます。積み替え型の場合は、この乗り換えの際にトレーラーごと交換するため、荷物の状態確認や書類の照合に少し時間がかかりますが、車両自体は自分の営業所に戻るので、車両の使い勝手や癖を熟知したまま乗り続けられるという利点があります。実務の手順をもう少し具体的に見てみると、交代型のケースでは次のような時間の流れになることが多いです。まず出発地の営業所で朝5時前後に出庫し、中継拠点まで約4時間走行して午前9時前後に到着します。ここでの交代作業自体は、書類の受け渡しと点検を含めて15分から30分程度で完了することが多く、わずかな待機時間の後に折り返しの運行に入ります。往路と同じ距離を戻るため、午後1時から2時頃には元の営業所に帰着し、そのまま業務終了となるケースが僕が見た範囲では多いです。ただしこれはダイヤが噛み合った場合の理想的な流れで、実際には積雪や事故による遅延で交代相手の到着が読めないことも少なくありません。ある会社では、中継拠点での交代を無線ではなく電話連絡だけに頼っていたために、相手の遅延情報が数十分遅れて伝わり、待機していたドライバーが休憩時間の計算を誤ってしまったという失敗談を聞いたことがあります。その後、この会社では中継拠点ごとに管理者がGPSで位置情報を共有する仕組みを導入し、遅延情報がリアルタイムで伝わるように改善したそうです。中継輸送を導入する際は、こうした情報共有の仕組みが整っているかどうかも、働く側にとっては見落とせないポイントだと僕は思います。実際に僕が聞いた話では、冬のある朝、交代相手の車両が凍結した坂道でスタックしてしまい、中継拠点で1時間半ほど待たされたことがあったそうです。その待機時間が給与上どう扱われるかは会社によって違い、こうした細かい運用ルールまで事前に確認しておく必要があると感じさせられた出来事でした。

4. 従来の長距離運行との違い(比較表)

項目従来の通し運行中継輸送(交代型)中継輸送(積み替え型)
一人あたりの走行距離片道800km前後(体感値)片道400km前後に分割片道400km前後に分割
帰宅頻度数日〜1週間に1回程度日帰り〜一泊二日日帰り〜一泊二日
宿泊の有無基本的に宿泊あり宿泊なしの運行が増える宿泊なしの運行が増える
車両への影響自分の車両を通しで運転相手の車両に乗り換え自分の車両は自拠点に戻る
賃金構造への影響(体感)長距離手当がつきやすい距離連動の手当は下がりやすい距離連動の手当は下がりやすい

この表からも分かる通り、中継輸送は拘束時間や帰宅頻度の面では働く側にプラスに働くことが多い一方で、手当が距離に連動して設計されている会社では、収入面で下がる可能性がある点は事前に確認しておいた方がいいと僕は考えています。求人票の月収例だけでなく、その月収がどの距離を前提にした数字なのかまで聞いてみると、切り替え後のギャップに驚くことが減るはずです。

5. 導入企業のパターン3つと、働く側が見るべきポイント

僕が見てきた範囲では、北海道の物流企業が中継輸送を導入する形は大きく三つのパターンに分かれます。一つ目は自社拠点間シャトル型で、自社が持つ複数の営業所間を、自社の社員ドライバーだけで交代しながら運行する形です。運行管理がしやすい一方、対応できる区間は自社の拠点網に限られます。二つ目は複数社共同運行型で、協力関係にある運送会社同士が中継拠点を共有し、ドライバーを交代させる形です。対応できる区間は広がりますが、交代相手が別会社の人になるため、引き継ぎの質に差が出やすいという声も聞きます。三つ目はフェリー併用型で、苫小牧などのフェリーターミナルを一種の中継拠点として使い、道内運行と本州側運行を別のドライバーが担当する形です。フェリー輸送そのものの働き方については別の記事で詳しく触れているので、ここでは中継の仕組みとしての位置づけだけ触れておきます。それぞれのパターンには特有のつまずきもあります。自社拠点間シャトル型では、拠点間の距離が短すぎると中継のメリットが薄く、逆に長すぎると休息時間の枠に収まらないというジレンマがあり、拠点の配置自体を見直すのに時間がかかった企業の話も聞きました。複数社共同運行型では、交代相手が別会社のドライバーになるため、車両の癖や荷物の扱い方の引き継ぎが口頭だけになりがちで、初期の数ヶ月は荷物の固定方法についての行き違いが続いたという声もあります。この課題に対しては、引き継ぎ用のチェックシートを紙で用意し、荷物の固定状態や車両の不具合を毎回記録する運用に変えたことで、行き違いが減ったという事例がありました。フェリー併用型では、フェリーの出航時刻という外部要因に運行全体が縛られるため、道内側の運行が少し遅れるだけで欠航時と同様の遅延が生じやすい点が特有の難しさです。これらの失敗と対処の積み重ねを経て、今の中継輸送の運用ルールが各社で少しずつ固まってきたというのが、僕がここ数年で見てきた実感です。求人選びの際は、この三つのうちどのパターンに当てはまるか、そして自分が担当する区間が本当に中継の対象になっているかを、面接や求人票の段階で具体的な地名付きで確認することをおすすめします。「中継輸送あり」という表記だけでは、対象区間の広さまでは分からないことが多いからです。

(結論)

中継輸送とドライバー交代制は、改善基準告示の改正という制度側の後押しと、北海道特有の距離の長さという地理的な必要性が組み合わさって広がってきた仕組みです。泊まりを減らせる可能性がある一方で、対象区間の狭さや手当構造の変化といった、事前に確認しておくべき点も残っています。皆さんいかがでしたでしょうか。中継輸送という言葉だけで判断せず、自分が乗る区間の具体を一つずつ確認していく——それが遠回りに見えて、実は一番の近道だと僕は思っています。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 中継輸送に切り替えると給料は下がりますか?

結論として、基本給や運行手当の設計を変えていない会社では大きく下がることは少ないです。ただし長距離手当が距離連動で決まっている会社では、片道の距離が短くなる分、手当額が下がるケースがあります。僕の体感では、切り替え前に距離連動の手当構造かどうかを確認しておくと安心です。

Q. 中継輸送はどんな会社でも導入されていますか?

結論として、北海道の物流企業全体で見れば中継輸送はまだ限定的な導入です。国土交通省が中継輸送を含む生産性向上の実証事業を進めてきましたが、拠点間の距離設計や交代要員の確保にコストがかかるため、大手や特定の幹線区間に強い企業から先行して広がっている段階だと僕は見ています。

Q. 中継拠点での待機時間は長くなりますか?

結論として、相手側ドライバーの到着タイミングが合わない場合は待機が発生します。積み替え型では荷物の受け渡し自体は短時間で済みますが、交代相手の遅延や積雪による遅れが重なると、拠点での待機が30分から1時間程度発生することも僕の経験ではあります。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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